「働きやすい病院づくり研修会」が開催されました

県内の医療機関における働きやすい環境づくりを促進するため,「働きやすい病院づくり研修会」が下記のとおり開催されました。
【開催日時】平成20年12月7日(日曜日) 10時から
【開催場所】ホテルみやけ

「働きやすい病院づくり研修会」が開催されました

講演中の長谷川京子先生

1.講演
演題 「医師が働き続けるためにできること,すべきこと」
講師 長野県女性医師ネットワーク協議会 長谷川 京子 先生
(1) ワークシェアの実態
  1. 院内における規定の整備(非常勤であるが,正規職員待遇)
  2. 医師のメリット:平日の時間確保,拘束日の減少,救急・重症患者・新生児・入院医療に携わることができたことによるキャリアアップ,病院への帰属意識の高まり
  3. 病院のメリット:医師の離職防止,医師数1名増員,安定した診療の確保
  4. 困難を感じた点:2人の不都合の重なり,勤務日は多忙,孤軍奮闘の限界

(2) 働きやすい病院にするためにできること(提言)

  1. 子育て中の女性医師だけでなく,すべての職員にとっての働きやすさを考える。
  2. 育児スケジュール,個々のワークライフバランスにあわせた働きやすさを考える。(フレックス、時短、休暇(長期・時間単位)等)
  3. 個人に任せるのでなく,院内にプロジェクトチームを立ち上げる。構成は,リーダー,サブリーダーに加え,第3者として監査,カウンセラー。よろず相談の設置。

(3) まとめ
ワークシェアは,替わりがいることと,自分の都合に合わせて働けること,休むことを実現するための1方法でしかない。みんなの都合を持ち寄り,トータルで現場のニーズに応える働き方,みんなでのワークシェアが理想。実現させるには,当事者だけでなく,病院全体の取組として,運営してほしい。働き方を変えると組織は強くなる。それぞれの組織を働きやすい病院に変えていっていただくことを願う。

 

「働きやすい病院づくり研修会」が開催されました

事例発表

2.事例発表
県内医療機関における働きやすい環境づくりの取組紹介
(1)徳山中央病院 院長 林田 重昭 先生
  • 医師,特に女性医師の勤務体制について,柔軟な取り組みを行っており,希望により各々カスタマイズすることも可能。(フレックスタイム,短時間勤務,検査・外来勤務のみ,日・当直の免除等)
  • 身分・処遇は,週40時間の勤務においては正職員,~20時間勤務は嘱託医。各々年1回の昇給,年2回の賞与(嘱託4,5ヶ月),他各種手当,福利厚生等。
  • 院内保育所を設置しており,乳児より利用可能。夜間保育も可能。研修や学会に安心して出席できる。

(2)山口労災病院 院長 伊藤 治英 先生

  • 働きやすい環境づくりは,女性にも男性にも共通する。多面的な支援を行っていく時期にきた。
  • 妊娠/育児中のオンコール・当直の免除,小学3年までの育児期間中の「短時間正規雇用制度」を4月より開始。
  • 「職場復帰支援マニュアル」を5月に作成。病児,病後児保育を年度内に設置予定。

(3)山陽小野田市民病院 院長 瀧原 博史 先生

  • 女性医師を対象に,月1回の日当直,月2回の当直を免除。(近隣の開業医による対応)
  • 職員が当直明けに,時間が許す場合,年次有給休暇が取りやすい精神風土が定着しつつある。
  • 病児休憩室,女性医師専用研究室(ソファーベットを設置し当直時にも利用可),クラーク制を導入し,働きやすい環境づくりに努めている。

パネルディスカッション

3.ミニパネルディスカッション
コーディネーター 松田昌子部会長(県医師会女性医師参画推進部会)
パネラー 長谷川講師,林田院長,伊藤院長,瀧原院長,國近尚美医師(山口赤十字病院)
<議論された内容と主な意見>・女性医師の相談窓口,対応等のシステムについて
  • 女性医師に,就労に関する問題が生じた時,なんでも相談できるシステムが必要でないか。
  • 診療科の部長に相談すればよいのでないか。部長で対応できなければ,院長へ話があがり,最後は院長が対応することになる。
  • 院内で働きやすい環境の整備が進んできている。これを医師に伝達し,橋渡しする方法を考える必要がある。
  • 女性医師のみでなく,全職員に情報提供し,病院全体のコンセンサスが得られるよう努める必要がある。
  • 女性医師が妊娠,出産,育児をどう乗り切るかが大事。本音をいかに言いやすくするかがポイント。管理者や上司の声かけが,女性医師のメンタリティを高めることにつながると思う。

・ワークシェアリングの実際,課題等について

  • ワークシェアリングはもともと1人役の仕事を2人でシェアすることだが,診療科において全医師がシェアする形も可能。
  • シェア時に医師間で治療方針等が異なる場合,基本的には話し合いにより解決。医長以下のチーム制の対応の場合,患者へのトラブルはないのではないか。

・院長から女性医師への一言メッセージ

  • これだけはできると言ってほしい。病院はそれ以上望まない。安心してほしい。
  • よくやってくれており何も言うことはない。心身の健康を続けてもらいたい
  • 一定のセーフティネットがある。是非,女性医師に来てほしい。

・まとめ
最近は,女性医師の出産・育児に伴う休業や育児支援など,女性医師が働きやすくなるような環境を整備する病院も増えてきているが,その仕組みを積極的に当事者に知らせ,サポートしていくレベルには達していない場合が多い。女性医師の立場を理解し,相談しやすいシステムを構築し,各病院における制度が有意義に運用されることを望む。